龍田の風を受けながら、
自然と共生しようとした
先人の想いや祈りを感じてほしい。先人の想いや祈りを
感じてほしい。
龍田大社 宮司上田 安徳UEDA YASUNORI
1961年大阪府出身。84年皇學館大學卒業。西宮神社などへの奉職を経て、93年龍田大社禰宜就任。2014年同大社宮司就任。同年、神社本庁参与就任。
龍田大社の信仰と地すべりとの関わり、
当地おける龍田大社の役割、
位置付けについて教えてください。
古来、自然災害は「神々の成せるわざ」であると人々はとらえていました。地すべりだけでなく、水害、地震などは、人の思惑や力の及ばない畏怖の対象でありました。人間を中心に考えると、これらは「自然災害」という言葉で表現されます。しかし、自然を中心に考えると『気』の流れの正常化とも言えます。それは悪いことでも、止めるべきものでもなく、自然のリズムのひとつであるという位置づけです。そして、大自然と人とが共生できるようにと祈りを捧げる対象、それが「亀の瀬」であると思っております。龍田大社にとって亀の瀬地域は、常に畏怖の対象であるとともに、災害が起こらないようにと人々が祈る対象でもあります。龍田大社は、都によい気を送り込む風の神を祀る神社でありながら、自然に対する畏怖や祈りを、自然そのものに伝えるために人が集まる神社でもあったと言えます。
この度、亀の瀬が日本遺産に
認定された意義を
どのようにお考えでしょうか。
日本遺産になったことで、大和と河内の県境の「亀の瀬」のダイナミックな自然、そして、この自然と共生しようと尽力された先人達に想いを馳せ、畏敬の念を抱くきっかけになるとよいと考えています。また、日本遺産の構成資産だけに人が訪れるだけでは、地域への波及効果は高まりません。龍田大社を訪れる人が、周辺のまちや飲食店に来訪したり、地域の産品を活用した店舗ができたりするなど、地域のさまざまな産業との連関が生まれ、面としての賑わいの創出につながることで、地域がより元気になるのではないでしょうか。
日本遺産に認定されたことで、
地域にゆかりのない観光客の方が、
龍田大社を訪れることが予想されます。
そのような方々に伝えたいメッセージをお聞かせください。
神道は、「信じる」というより「感じる」宗教です。龍田大社のご祭神が司る、龍田でしか感じえない『風』を是非とも感じて頂きたいと思っています。また、地域には、金山彦神社や金山媛神社などの関連する神社があるほか、河合町には、龍田大社と関係が深い、水の神を祀る廣瀬神社があります。これらの神社を巡っていただくと、より深く、地域の信仰のすがたを感じることができます。龍田大社には、日本遺産の構成文化財にもなった風鎮大祭、例大祭といった祭祀があります。過去の時代から、氏子や崇敬者の皆さまのご協力を得て、祭祀が今日まで継承されてきました。祭祀にはそれぞれ意義があり、太古から伝わってきたものをそのまま連綿と受け継ぎ、更に次代へとそのまま受け渡していくことが神社にとって最も重要な責務であると考えています。日本遺産になって龍田大社やこれらの祭祀を初めて知る方もいらっしゃると思いますが、自然を感じ、先人への畏敬の念をもって、当地を訪れていただけると嬉しいです。
※インタビューは2023年3月時点の内容です。
※インタビューは2023年3月時点の内容です。