日本において極めて重要な
災害遺産「亀の瀬」を地域の方々、
旅行者が楽しめる場所へ。
日本において極めて重要な
災害遺産「亀の瀬」を
地域の方々、旅行者が
楽しめる場所へ。
大和川河川事務所 建設専門官宮田 大悟MIYATA DAIGO
1977年生まれ。立命館大学理工学部を卒業後、近畿地方整備局に入省。河川部や企画部に所属し、近畿地方の河川、ダム、防災の業務を担う。2011年より大和川河川事務所に所属。現在は建設専門官として河川改修や維持、環境整備、地すべり対策などに携わる。
亀の瀬の土木遺産が日本遺産に
組み込まれたことは、
非常に珍しいことですが、
亀の瀬地域の土木遺産の魅力、
意義はなんだと考えていますか?
❶歴史の長さ
古代から龍田古道が通っていたことから、亀の瀬の歴史の長さは特筆すべきものがあります。大阪平野と奈良盆地を繋ぐ物流の拠点として唯一の利便性を誇りながら、地すべりという苦難を抱え、それでも利用してきた人の営みの歴史が、亀の瀬の歴史そのものと言っても過言ではありません。また、亀の瀬地域とそこに象徴的にある亀岩は、長年に渡る災害の歴史を乗り越えたシンボルでもあります。
❷対策工事のスケール
全国に数多くある地すべり対策地の中でも、100m級の杭を170本以上埋設し、排水トンネルの全長が7㎞以上、集水ボーリングの総延長が147㎞(*大阪から天橋立までの距離と同程度)という規模の対策が行われている場所は極めて稀です。そこまでの費用と技術、労苦を投入してでも、山の動きを止めるというのは前代未聞のチャレンジだった訳です。仮に杭や排水トンネルが地上に露出していれば、どれ程のスケールの工事であるか分かりやすいのですが、大型のダムや橋梁などの最近ツーリズムとして活用されているインフラと比較しても、そのスケールと魅力は匹敵するものです。
❸社会基盤を支える重要性
奈良盆地を流れる150あまりの河川の唯一の出口がこの亀の瀬です。防災上において亀の瀬が閉塞するということが、上流域や下流域にとってどのようなこと意味するかを考えると、今もその重要性が分かると思います。また、鉄道や国道など、都市間の人流と物流を支える社会資本としての重要性も昔と変わっていません。それらを総合すると、亀の瀬の重要性は今もなお増していっています。
明治期のトンネルの見学が人気だと
うかがっています。
亀の瀬トンネルが人の心を掴むのは
なぜでしょう。
ハイカーの方や学習施設として利用される方、また鉄道に興味があって来られる方などさまざまな目的があるようです。亀の瀬トンネルの魅力は、亀の瀬で唯一災害時の状況が残っており、わかりやすく目で見て体感できる場所だからだと思います。もちろん、交通遺産としての重要性もありますが、災害の実態をリアルにとどめる災害遺産としての価値もあるのだと思います。
大和川を通じて、この日本遺産を
より楽しめるようにするために、
今描いているビジョンについて
お知らせください。
亀の瀬の地すべり対策工事もようやく落ち着いてきており、次は亀の瀬上面の斜面や広場などの利活用を考える段階となっています。また、防災教育等の場としての地下構造物の活用も含めて、地域の方々に楽しみながら学んでもらえるような多目的な場所として整備したいと考えています。
今後、さまざまな社会実験を通じて、大和川や亀の瀬を楽しめる場所としていきたいです。地すべり対策は日本において極めて重要な土木対策でありながら、なかなか一般の方々に認知されにくい現状があるので、土木遺産や地下構造を体験するコンテンツをより充実させていきたいと考えています。
※インタビューは2023年3月時点の内容です。
※インタビューは2023年3月時点の内容です。